Nirvana(ニルヴァーナ)1989年スウェーデンのテレビのインタビューがあったので、そちらを引用し、翻訳しました。1989年といえば、デビューアルバム『BLEACH』をリリースして間もないとき。カートもクリスもみんな音楽をやりたいと満ち溢れていたときに思う。
ドラムはデイヴ・グロールの前のチャド・チャニング。
Nirvana(ニルヴァーナ)カート・コバーンのインタビュー 1989年スウェーデンのテレビ
クリス:
俺たちはレーベルの前に“バンド”なんだ。だから、レコード会社のことより、自分たちの音楽のほうが大事なんだよ。Sub Popはたしかにハイプ(誇大宣伝)が多いけど、良いバンドもいる。全部が宣伝ってわけじゃない。
インタビュアー:
「ハイプ」ってどういう意味で?
カート:
宣伝だよ。過剰なプロモーション。設立してからたった1年半で、あんなに人気レーベルになったのは驚きだよ。でも“実力のあるバンドがいないただのハイプだ”って言う人も多い。
クリス:
レコードショップに行って「Sub Popの何かありますか?」って聞いて、とりあえず買う人もいるんだよ。
「ワーナーのCDありますか?」って聞いて、「ああ、これABBAの新譜だよ」って言われて、「うわ、ありがとう!最高!」って言うのと同じさ。
カート:
ABBAってスウェーデンだっけ?
インタビュアー:
そうです。
クリス:
好きだよ、ABBA。
カート:
最高だよね。俺も好き。
ナレーション(スウェーデン語から翻訳):
Sub Popを取り巻くハイプの多くは、商業的な宣伝やタブロイド記事による作られたものだ。ニルヴァーナは「良いバンドも多い」と語るが、彼らは60〜70年代ロックに影響を受けたバンドの中でどう違うのか?
カートは、彼らが主にパンクに影響を受けており、現代のパンクの方が昔より良いと感じているが、政治的なメッセージを伝えるつもりはないと語る。
カート:
俺たちはどちらかといえばストゥージズ(The Stooges)型のパンクロックかもね。パンクが“流行”になる前のタイプ。
イギー(・ポップ)が観客に向かってダイブして自分を傷つけたりしてたのは、そういう環境を作りたかったからだと思う。でも当時の観客は、音楽を楽しむというよりヤジを飛ばしてた。エンタメとして見てたんだ。
今はもっと、バンドと観客が一緒に作り上げる感じがある。お互いを少し尊重し合いながら、一緒に楽しむ。瓶を投げ合ったり、鼻にピン刺したりするんじゃなくてね。それが、本来のパンクの姿だと思う。
インタビュアー:
メッセージについては?
カート:
メッセージ?
インタビュアー:
歌詞とか。当時のパンクは政治的メッセージを込めてたでしょ。10年前、いや14年前かな。
カート:
たしかにね。(笑)
クリス:
でも俺たちにはメッセージなんてないよ。
カート:
うん、まったくない。
クリス:
U2とかジョーン・バエズみたいに、人にメッセージを届けるタイプじゃない。
チャド:
だから俺たちはパンクじゃないんだよ。(カート笑う)
インタビュアー:
つまり君たちは“ニルヴァーナ”なんだね。
クリス:
ロックンロールが好きなんだよ。でも――
チャド:
ロックンロールはもう死んでるけどな(笑)
クリス:
……まぁ、そこまで重要なもんじゃない。人生にはもっと大切なことがある。
カート:
へぇ?たとえば?
クリス:
愛だね。
ナレーション:
「人生にはロックンロール以外にも大切なことがある」と語るニルヴァーナのベーシスト、クリス。そのひとつが“愛”。
だが、彼らの音楽は決して柔らかくロマンチックではない。
クリス:
俺たちの新曲、聞いた?
カート:
柔らかくて…フラストレーションがあって、ロマンチックだよ(笑)
インタビュアー:
いや、そうは思わないな。
カート:
いや、そう思うよ。メッセージがなくても、俺たちの音や雰囲気には思いやりや感情がある。
見た目はネガティブで攻撃的に聞こえるかもしれないけど、俺にとっては“優しくてロマンチック”なんだ。
インタビュアー:
ニルヴァーナで演奏することは、感情を吐き出す手段でもある?
カート:
もちろん。まさにそうだね。
クリス:
そう、いいライブをすると本当に気分がいい。最高の気分になるよ。
インタビュアー:
セラピーみたいな感じ?
カート:
その通り!今まさにこれ(インタビュー)もセラピーだよ。君は俺たちの分析者だ。
普段はそんなに自分たちのことを考えないけど、インタビューで話すと「今の発言ヤバかったかな?」とか考え始めるんだ。
つまり、俺たちはまだ自分たちが何者かを探してる最中なんだよ(笑)
クリス:
そうだね。探してる最中。
カート:
他のバンドみたいにカテゴライズされたくないんだ。たしかに60〜70年代の影響はあるけど、あの時代があれだけ強烈だったんだから、ある程度似てても当然だよ。

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